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つづき


 
あなたもきっとそうでしょ? いつもこんな週末
だといいな。でも、一緒にすんだりすると、こ
ういうわけには、多分いかないと思う。どう
したらいいの。今から、考えておかなくては。
会えない日があるから、会ったとき何倍も
楽しいなんて、いいのか悪いのかわからない。
あなたは、先のことを考えたり、がんましたりする
のが得意だけど、私はにが手だから、
いいのか、悪いのか、きめられないわ。
今日は、ブルーマンデーにふさわしい、かったるい
日でした。今朝まであなたといたんだから、
その余韻を楽しめばいいのに、
もう、すでに、船乗りの妻のような気持
ちになってしまうの。なんでもないことに
暗示を見いだして、なにかよくないことが
おこるんじゃないかなど心配してしまうの。
それが、何度も、何度もだから、会えない日々
が長くなると、なにも、手につかない程に
なってしまう。あなたに、手紙を書く用に、
すてきだと思って、緑のインクのボールペン
を、少し前に買ったけど、迷信がこわくて、
ずっと、使えないの。私は、そんなこと、
全く信じなかったのに。あまり私に心配
させすぎると、早く老けこんでしまうかもし
れないから、気をつけてね。電話で少し
声を聞かせてくれるだけでいいんだから。
夕方、XXX さんにひさしぶりに会って、楽しか
ったです。相変わらず XXXさんはぶーだっ」  


 
 読みにくくなってしまったが、長い用紙の巻紙のようになっていて、一枚が長い。

 スキャンするのに重複してしまっているがご容赦願いたい。


 この手紙は変わっていたし、長かったから嫌な予感がしたものだ。

 ずっと終わらずに手紙が続いていた。



 嫁の不安と心配が伝わってくる。

 こういうのがなければ当時の俺はどうなっていたか分からない。


 声を聞かせろと言っているのだから電話ぐらいしてやれ、それは今の俺だから言えることだ。

 当時の俺はこんな彼女の気持ちがもったいなく、それでいて、いつまでも聞いていたくて、俺は同じ態度を続けていた。

 俺は彼女に思い切り甘えていたから、読み返すととても切なくて苦しくなる。
 



 「緑のインク」と書いてあって、何のことかわからず、確か気になってこの手紙の後に彼女に電話をしたのだったと思う。

 彼女は電話でははっきり言いたくないようだったが、どうも緑のインクは不吉で、恋人たちが死別したり別れたりする、そんなジンクスがあるらしかった。

 女の子だから、買ってしまった後になってそれを知り、怖くなったんだろう。


 確かに、この頃、俺たちには別れが迫っていたということはあったんだ。


 それは今だから言えることだけれども。




 この頃、嫁は絵の仕事をしていた。

 デザインをしたり、挿絵なんかも描いていた。

 会社に行って事務なんかをしつつ、絵の仕事を選んで取ってきて楽しくやっていた。

 その編集には随分と目をかけてもらい、世話になったものだ。

 

 結局、嫁は老け込むことはなく(笑)、美魔女ぶりを発揮して毎日楽しくやっている。

 歳をとるにつれ、楽しく美しく感じる。


 ずっと嫁は絵の製作を続けてきたが、すっかりこのところやってない。


 前ならそのことで怒鳴りつけたりしたものだったが、今は色々あって穏やかにするよう努めている。

 まずは二人のことだ。


 つい五月の頭まで、それこそ嫁は毎日大荒れで、それこそ浴びるように酒を飲んでいたのだから。

 そろそろコロナの状況も落ち着いてきたようだから、歯医者に行かないといけないのだが、なにしろ時間がない。