最近、嫁が寝ぼけて俺のカラダに足を乗せてくる。言ってみれば抱きマクラのようなものかw。

 別に悪い気はしない。

 俺と嫁と二人、いつも川の字に寝ていて、嫁は俺に対して左。

 これがいつもの位置だ。

 歩いててもそれは変わらない。俺は人を自分の左側に置く。



 だから嫁は右側に寝返って俺の胴体に足を乗せてくる。

 嫁は夜中に足を俺の腹にドスンと乗せてくる。


 まどろみながら俺はハッとする。

 嫁が横になって俺の腹に曲げた膝と長い脚を乗せてくるのだ。


 身長165センチ。結構重いw。



 しかし抱きマクラにされるのは悪くはない。悪い気はしない。

 「寒くなくなったらもうしない」なんて嫁は言うが、懐かれていると感じるのは嬉しいものだ。


 
 ただ、股間が困る。非常に不安なのだ。

 そうして膝を曲げて俺の腹の上に脚を乗せてくると、時々股間が危ない感じになってしまう。

 あと少しでギリギリの位置なのだ。

 ましてや俺が朝になって股間が硬くビンビンになってたりするとイチモツが心配になってくる。

 不用意に足を動かされたら折れるのではないかと、朝の状態で緊張している股間が心配になる。


 実際に嫁が聞いた話だが、嫁の知人の旦那は朝勃ちを鎮めることもせず無理矢理に曲げて朝のトイレを済ませようとしたらイチモツがポッキリ折れてしまったとか。

 それでその旦那はどうなったか、男性機能は無事だったか、そこまでは聞いてない。



 ともかく、その心配で俺は落ち着かない。 どうしたって危ないと思うからだ。

 手でカバーしたりするが俺の手はそんなに長くない。


 あとちょっと、何か嫁が悪い夢でも見ようものなら足を曲げてきて股間を蹴り飛ばされてしまうのではないか、と。




 バレエダンサーの男たちは股間を守るためにカップのようなものをつけているそうだ。

 あれだけ激しい絡み合うような動きをしていれば確かに股間を守る必要がある。

 分かる。

 リフトして下ろす時にちょっとでもグラつけば膝が股間を直撃するかも知れない。


 ところが、嫁にはそういう俺の心配が分からない。ピンとこないらしい。

 こちらもせっかく嫁から懐かれているいい雰囲気に水を挿すわけにもゆかず、悶々としているw。


 なかなか心配を言い出せない。

 隣に寝ているのに手さえ触れない夫婦なんてのもいるそうだ。そんなのたまらないではないか。

 すぐそこにいるのに心が遠いなんて我慢がならない。

 だから嫁から近づいてくれるのは嬉しいものだ。それにケチはつけたくない。


 しかし男性の身体的な特徴として股間を蹴り飛ばされると痛いのだ。折れるのも怖い。

 どうか。何ならバレエダンサーの股間カップでも買おうかと思ってみたりもするw。




 女性が男性の身体的な特徴に気が付かないことで困ることは色々とある。

 朝勃ちでオトコがトイレを汚しがちになることなんて基本中の基本だww。

 ちょっと便器を外して引っ掛けてしまい床をコソコソと拭いていると「こぼしたの?」なんて聞かれるがバツが悪い。

 どうも嫁は「しまりがないわねぇ」なんて思ってるフシがあるからだ。

 そうじゃないのが分からない。



 しかしそれは女性にしても同じなんだろう。

 生理というだけでイライラしていただけなのに、それに男が怒ったりするなんてよくあることだ。

 女性はただ生理でイライラしてるだけなのにオトコはケンカでも売ってるのかと逆キレしてしまう。

 そういうスレ違いはよく聞く。


 俺にはそれはなかった。

 生理というのが女性の気持ちに大きく影響を与えることは知っていたから、イライラをやり過ごしてみたり、なだめりしたものだ。


 「生理痛かい?」なんて女性に聞いてやったこともある。

 気遣ってやったつもりなのだが、そうすると周囲の女性たちは「デリカシーがない」、なんて俺にそんな非難をしたものだ。

 「生理は汚いもの」なんて感覚がその昔はあったから話題にするのさえはばかられた。そんな時代があった。


 女性は勝手なことを言うものだ。言葉ばかり上手だ。こういう配慮は知識の問題に過ぎない。

 「デリカシー」なんて、もっと人の気持ちが分かるかどうか、せいぜいそんな時に使ってもらいたい言葉だと俺は思う。






 生理のようなハッキリしたことではないが、その時々の体調によって気分が違う、そのことで嫁と感覚が違いスレ違うというのはあった。

 互いの感覚は共有できなければななか理解できるものではない。

 人の痛みは分からない、そんなことを言う。


 嫁は若い頃、「腹が減るととたんに不機嫌になる」という傾向があって、それが俺にはまるで理解できなかった。

 だからよく叱ったりしたものだ。「腹が減っただけでそんなに不機嫌なんかになるなよ」、と。

 「だってさっきから何も食べてないじゃない。」なんて言われたものだ。

 何かに集中すると食うのを俺は忘れた。まるで気が付かなかった。


 今は歳を取って逆になった。

 今の俺は腹をすかせると脂汗をかいて困惑するほどになった。ブッ倒れそうになる。

 眩暈すらするようになった。きっと加齢で代謝が変わったのだろう。

 嫁の方は逆に「そんなことになったことない。」なんて言う。

 あんまりメシを食わなくても泰然としている。昔のことがあるから心配になるほどだ。


 年齢によっての変化と言うのがあるんだろう。

 いくら男女に身体的特徴、その違いがあると言ってもそういうことまで理解するのは難しい。

 実感が湧かないからどうしたって相手のことを忘れてしまう。






 ともかく、どうしたら股間を蹴り飛ばされないようにするか、今はそれを密かに考えているw。

 せっかくの甘い思いをぶち壊したくはないから自分でなんとかするしかない。


 思えば昔はよく「腕マクラ」をしたものだ。

 俺がオトコの作法とばかりに嫁を腕に乗せて寝ようとするのだが、何しろドラマや映画の物真似でしかない。

 腕に嫁の頭を乗せるコツが分からず、すぐに痺れてしまった。

 すぐに腕が痛くなってしまう。

 それで振りほどくと嫁は「すぐダメになる」なんてからかった。

 それなら「抱きマクラ」になる方が楽だ。股間の心配だけだ。




 まあ暑くなればどうせ「ベタベタする」なんて言って嫁はこっちに寄り付かなくなるんだろうけれども。



 我が家はクーラーがないから真夏はイタすことがなかなかできない。

 つうかこのところずっとご無沙汰だ。

 キスには応じてくれるw。